【名刺デザイン】コミュニケーション・サポーター|園元恭子様
人は、自分の内にある言葉を、
そのまま外に出せるとは限りません。
言葉になる前の違和感、
うまく整理されていない感情、
外に出すにはまだ形を持たない思い。
けれど、それらは確かに存在していて、
対話の中で少しずつ輪郭を持ち始めます。
今回の名刺では、
そうした“見えない言葉”が立ち上がるプロセスを、
視覚と構造で扱うことを考えました。
【思想】
打ち合わせの中で見えてきたのは、
「言葉を扱う仕事」でありながら、
単に話す・伝えるということではなく、
言葉になる前の状態や、
内にあるものを丁寧に扱っている方だということでした。
英語、コミュニケーション、価値観、エニアグラム。
扱っている分野は異なりますが、
共通しているのは
“内にあるものを外に出すための支え”という役割です。
そこで着目したのが、
中世ヨーロッパにおける「sub rosa(サブ・ローザ)」という考え方でした。
バラの下で語られたことは外に出さない。
安心して本音を話してよい場の象徴です。
この考え方を軸に、
対話の中で言葉が生まれていく状態を
一枚の名刺として設計しています。

【構造】
名刺は個人向けと企業向けの二種類を制作し、
それぞれが単体で成立しながら、
並べたときに一つの構造として繋がるよう設計しています。
個人向けは「花」。
対話の中で開いていく言葉や人柄を表現しています。
バラのモチーフに、
吹き出しの形を重ねることで、
言葉と対話が重なりながら輪郭を持っていく構造としました。
企業向けは「茎」。
仕事の軸や成長の方向性を担う部分です。
三つの分岐として、
親業、エニアグラム、価値観ババ抜きを配置し、
それぞれの領域が一つの軸から広がっている状態を示しています。
さらに、茎には棘を配置しました。
問題や葛藤を排除するのではなく、
それを受け止めながら進んでいく姿勢として扱っています。
花と茎。
内と外。
対話と軸。
二枚で一つの構造となるよう設計しています。


【実装(デザイン・紙仕様)】
紙はロイヤルホワイトを選定し、
部分コートによる透明インクを使用しています。
この透明インクは、
“見えないものが立ち上がる瞬間”を支える要素です。
個人向け名刺では、
印刷されたバラに加え、
光の角度によって浮かび上がる輪郭やハイライトを
透明インクで表現しています。
さらに、名前側の白い余白には、
印刷を伴わない透明インクのみで、
バラの気配をわずかに配置しました。
これは実像ではなく、
対話の中に現れる
“まだ言葉になっていない部分”のような存在です。
企業向け名刺では、
茎や棘の一部に透明インクを使用し、
光の当たり方によって構造が浮かび上がるようにしています。
見えているものと、
光によって初めて見えるもの。
その二層構造によって、
内面と外側の関係を表現しています。
【受け取るという体験】
今回の名刺は、
もともと贈り物として制作されたものでもあります。
一枚の名刺を贈るという行為から始まり、
最終的には二種類の名刺を
それぞれの立場で持つ構成となりました。
そのため、単に情報を伝えるツールとしてではなく、
人から人へ手渡される体験としての在り方も、
この名刺の中に含まれています。
受け取ること。
言葉を交わすこと。
関係が少しずつ形になっていくこと。
その一連の流れ自体が、
今回の設計の一部でもあります。
【世界観】
見えないものに輪郭を与える。
言葉にならないものに、触れられる形を与える。
名刺は、情報を伝えるためのツールであると同時に、
対話の入口として機能するものでもあります。
この仕事で扱っているのは情報ではなく、
その人が何を伝える存在であるかという定義です。
自分が何者であるか。
どう見られ、どう関係が始まっていくのか。
その認識を揃えること。
この一枚は、
単なる連絡手段ではなく、
人と人との関係が立ち上がるための設計として扱っています。

お知らせ)
2026年度の名刺単体のみの新規ご依頼は見合わせております。
(ロゴデザインと同時のご依頼のみお受けしております。)
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制作の裏にある判断については、noteで書いています。






